身代わり王女に花嫁教育、始めます!
彼らの力は有事にこそ最も必要とされる。

日照り、旱魃、飢饉、洪水などの自然災害。そして一番が――戦争。彼らの力なくして砂漠では戦えない。


リーンはそう聞いていたが……。


「涸れ谷は多くの死者の魂が集まる場所。人や動物も。餓えや憎しみに囚われたまま命を落とした中から、より凶暴な性質を持つ魂を選びだし、力を与える悪魔が存在する、と」


アリーの言葉を聞きながら、リーンは身震いすると同時に首をかしげた。


――それほど凶暴であるなら、どうして自分たちは生きているのだろう? ほかの者たち同様、あの場で喰い殺されていたはずではないだろうか?


そんな疑問にアリーが答える。


「魔物に力を与えるため、地獄から悪魔を呼び出した人間がいる」

「そんな……簡単に呼び出せるものではないでしょう?」

「砂漠の恐ろしさを知り、涸れ谷に出入りし、そして悪魔に代償を捧げることのできる者なら――そう難しいことではない」


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