身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(6)魔に伏す赤い瞳

「カリム・アリーよ。“王の花嫁”とやらを連れて出てくるがよい」


若い男の声がした。サクルではない。

それに、ごく普通の人間の足も見え、リーンはホッと息を吐く。


「外に出ますよ、王女様。私から決して離れぬように。よろしいですね」

「は、はい」


前かがみになったまま進み、穴倉から外に一歩足を踏み出す。

そこはかなり天井の高い洞窟だった。しかも広い。中央にいくほど窪んでいるのは、きっとここに泉があったのではないかとリーンは想像した。

だが今は、一滴の水も見当たらない。

それはここが数年、いや数十年前に干上がった涸れ谷であることを意味していた。


目の前に数人の男が立っている。一番前に立つのが先ほど声をかけた男に違いない。サクルとそう年齢は変わらぬように見える。

だが、頭に青い布を巻き、身にまとうマントも青。

それは彼らが砂漠の民、しかも異民族であることを意味していた。


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