身代わり王女に花嫁教育、始めます!
彼はひとりも処女は抱かず、ここ数年はハーレムに訪れることもなくなった。


(少し身なりを変え、町に下りるだけで、女はいくらでも調達できる。一族のために戦い、勝利に導いてやったのだ。これ以上、種馬にまで利用されるのはごめんこうむる!)



太い三本の支柱に支えられたテントは何層もの構造をして、複数の部屋に分かれていた。テントを覆う幕は黒い山羊の毛で編まれたものだ。

そういったテントが複数並び、どこが王の滞在場所かわからないように作ってある。


「陛……いえ、カリム様、レイラー王女のご到着です」


サクル王――カリムは野営地の真ん中に建てられた見張り台に立ち、到着したばかりの馬車から降りてくる人影に目を細めた。


「あ、あの……カリム様……」


野営地の全員に滞在中の国王を側近カリムとして扱うよう命令が出ている。

見張りの兵士は危うく『陛下』と呼びそうになったのを咎められるのかと、びくびくした顔で彼の横顔を窺っていた。


「――金糸の衣を身に着けているのが王女か?」

「は、はいっ! そう聞いております。侍女には黒い衣(アバヤ)を脱がぬよう、指図が出ていますので」


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