身代わり王女に花嫁教育、始めます!
しかしそこは人の手により掘られた穴倉に過ぎず、洞窟から逃げ出すことはできなかった。


「魔物はあなただけは喰わぬよう命じられているようだ。だが、他の者は見境なく手をかける。おそらく、あなたと一緒でなければ、私も喰われていたでしょう」

「ではもう……シャガールの亡骸から悪魔の力は抜けたのですか? それなら……」


少なくとも巨大な魔物に襲われることはなくなる。

リーンは期待を込めてアリーを見る。

だが……。


「王の花嫁は何も知らぬとみえるな。今は腹も満たされ、よく眠っているが……眠りから覚めると同時に、アレの中の悪魔も目覚める」


口もとにいやらしげな笑みが浮かべ、答えたのはカッハールだった。


リーンの記憶にあるアミーンは、二十歳前後とかなり若かったように思う。

だが、兄と名乗るカッハールは三十歳を超えているようだ。見た目もまるで違う。レイラー王女が一緒に逃げただけのことはあり、アミーンは背が高く美丈夫といった容姿をしていた。

カッハールの体格は大きめだが締まりがない。顔のつくりも荒く、全体的に野蛮といった印象だ。


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