身代わり王女に花嫁教育、始めます!
そして、ようやくリーンは気づいた。

カッハールの瞳が真っ赤な血の色をしていることに。背後に立つクライシュ族の男たちもみな同じだった。


「この者たちは王の命を狙うため、悪魔に魂を売ったのですよ。赤い瞳はその証」


アリーの言葉にリーンはひざが震えはじめた。


「まずはお前だカリム・アリー。血の繋がったお前の死体が転がっていれば、さすがの王も驚くだろうな。それから……」


カッハールは言葉を切ってリーンを見た。


「王の花嫁の純潔をいただくとしよう。我らによって嬲りものにされたと知れば、どう出るかな」


赤い瞳がメラメラと炎のように揺れ、カッハールは舌先でペロリと唇を舐めた。その舌も異様に赤く尖って見え、リーンはアリーの後ろに隠れる。


「愚か者の極みだ。それでは王の命を狙うどころか、王の怒りを一身に受けることとなる。貴様が呼び出した悪魔とは、死体に群がるドゥルジのひとりだな。ドゥルジは“偽り”に引き寄せられると聞く。この度の、様々な“偽り”が悪魔を引き寄せたようだ」


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