身代わり王女に花嫁教育、始めます!
それを目にしたとき、リーンはアリーの手を力任せに振りきる。

そして、侍女に向かって走り出した。


「何をするおつもりだ! お戻りください、王女様!」


アリーには申し訳ないと思う。

だが、どんなふうに庇われても、王女を騙ったのはリーンだ。逃げ出したレイラー王女や、リーンの嘘を知りながら花嫁に迎えようとした王のせいにはしたくない。


(それに、わたしだけは食べないように命じられている――アリーどのはそう言ったわ)


「彼女を襲わないで! 襲うならわたしになさい! さあっ」


すると、シャガールはいきなり向きを変え、洞窟内をリーンに向かって駆けてきた。

リーンの足は止まり、棒立ちになる。


(え? もう、命令が切れたなんて、言わないわよね?)


呆然と立ちすくむリーンの真横、砂塵を巻き上げ、シャガールは走り抜けた。


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