身代わり王女に花嫁教育、始めます!
ひとりが黒いスカーフ(ヒジャブ)と黒い衣を脱いだ。その下には金糸の絹糸で織られた花嫁衣裳を纏っている。
馬車から降り立った女はふたりのみ。
「確か、侍女はふたりと聞いていたが」
「それも確認しました。なんでも、国境付近の町で年若い侍女が高熱で倒れたそうです。国王陛下のお許しがいただければ、後日もうひとり呼び寄せたい、とのこと」
「ほう……高熱で、か」
彼はトーブを脱ぎ、太陽の下に上半身を晒したまま、レイラー王女を見下ろす。
王の体内にやり場のない怒りが駆け巡る。
最後の大きな戦いが終息して早五年。
一族らはクアルン王の名前に威厳を持たせ、周辺諸国の有力者に恐れおののかせるため“狂王(ザッハーク)”などという呼び名をつけた。
そのせいか、表立って逆らう者はいなくなった。
だが、裏では虚仮(こけ)にされていたに違いない。その証拠が、この『レイラー王女の偽者』だ。
馬車から降り立った女はふたりのみ。
「確か、侍女はふたりと聞いていたが」
「それも確認しました。なんでも、国境付近の町で年若い侍女が高熱で倒れたそうです。国王陛下のお許しがいただければ、後日もうひとり呼び寄せたい、とのこと」
「ほう……高熱で、か」
彼はトーブを脱ぎ、太陽の下に上半身を晒したまま、レイラー王女を見下ろす。
王の体内にやり場のない怒りが駆け巡る。
最後の大きな戦いが終息して早五年。
一族らはクアルン王の名前に威厳を持たせ、周辺諸国の有力者に恐れおののかせるため“狂王(ザッハーク)”などという呼び名をつけた。
そのせいか、表立って逆らう者はいなくなった。
だが、裏では虚仮(こけ)にされていたに違いない。その証拠が、この『レイラー王女の偽者』だ。