身代わり王女に花嫁教育、始めます!
周囲に言われて仕方なく……なんて言い出せばきりがない。

王女と称することが罪になるとわかっていて、大公や国民のためと信じて犯してしまった。その結果、こんな悪魔――ドゥルジまで呼び寄せ、多くの犠牲者を出した。

リーンは勇気を出して叫ぶ。


「侍女は? さっきの侍女はどうなったの? それに、カリム・アリーはどこ?」

「侍女? ああ……とうの昔に私の下僕が喰らい尽くした」

「……酷い」

「とんでもない。死にかけていたところを、少しでも生きたいと願うから叶えてやっただけだ。感謝して欲しいくらいさ」


カッハールはニヤリと笑い、舌を見せる。


どこかが違う。

洞窟にいたときは、もっと狂王に対する憎しみを露わにしていた。

だが今は、どこか冷ややかな印象が消せない。雰囲気だけでなく、顔の造作も違うのだ。心持ち、顎の辺りがスッキリして目鼻が整い、肌が浅黒くなったような……。


気配を探るようなリーンの様子に気づいたのか、カッハールは口を開いた。


「ほう、敏い娘だ。同化してだいぶ経った。それに、日が沈み、砂漠を闇が支配すれば、我らも動きやすい」

「あ、あなたが……ドゥルジ?」


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