身代わり王女に花嫁教育、始めます!
口を閉じ、見つめ続けるリーンの傍らにサクルはひざをつく。彼は白いトーブを脱ぎ、リーンの肌を男たちの目から隠した。


「そう怯えるな。私はお前を救いに来たのだ。それから……人前でその名を呼んではならぬ」

「サ……では、なんとお呼びすれば?」

「それは……」


答えを聞く前に、リーンは真横から風を感じた。


それはクライシュ族の男が剣を手に巻き起こした風。

そのことに気づいたのは、サクルが腰のシャムシールを抜き放ち、男の腕を斬り落としたあとのこと。


「きゃあ!」


ボトリと音がして剣をつかんだままの浅黒い腕が砂の上に落ちる。

ときを移さず、薄い細身の片刃刀は、吸い込まれるように腕を失くした男の胸を貫いた。


「死ねーーっ!」


今度は別方向から、ふたりの男が同時に斬りかかって来た。


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