身代わり王女に花嫁教育、始めます!
サクルはリーンを抱きかかえるように立たせると、男たちの剣をあっさり弾き、ふたりの首を刎ね飛ばす。

クライシュ族の男たちはそれを見ても怯まず、数十人が一斉に、こちらに向かってきた。

男たちは口々に「王だ!」「狂王を殺せ!」「アミーンの敵討ちだ!」そんな言葉を叫んでいる。


(どういうこと? どうしてサクルさまに向かってこんな……)


リーンはサクルの服に手を伸ばし、ぎゅっと掴んだ。


「愚か者どもめ!」


サクルは手にしたシャムシールを砂上に突き刺し、小さな声で精霊を呼ぶ呪文を唱える。


『ムハッラム、アル=ムハッラム、サファル、ラビーウ・ル=アウワル!』


一瞬で男たちのいた場所が水に沈む。

彼らは驚いて足を止めるが、深さはせいぜいがくるぶし程度。すぐに剣を振りかざし、ふたりに襲いかかろうとしたとき、それは水の中から飛び出した。

オアシスでリーンを水の中に引き込んだ水竜。

何体もの水竜がクライシュ族の男たちに襲いかかる。応戦するものの、いかなる刃も水を斬ることなど不可能だ。

彼らは為す術もなくからめ取られ……浅いはずの水中に引きずり込まれていく。あるいは、水竜に巻き取られて体をねじ切られる者、中空から砂上に叩きつけられ息絶える者など様々だった。


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