身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(2)恋心

――五つ岩のオアシス付近に涸れ谷はない。


その報告を聞いたとき、サクルの苛立ちは沸点まで達した。

ないはずがないのだ。魔物が現れた以上、涸れ谷は必ずある。

役に立たない配下の兵士たちを無視し、彼自身が精霊の声を聞きながら探したため、思いのほか時間がかかってしまった。

完全に砂漠が闇に包まれたあとなら、下っ端の悪魔ドゥルジといえど手こずったかもしれない。


サクルはリーンを腕に抱き、ようやく花嫁を取り戻した実感に胸を撫で下ろした。


「サクルさま……サクルさま」


白いトーブで裸体を隠しただけの花嫁は、うわ言のようにサクルの名前を呼び続ける。

リーンの顎に手を添え、上を向かせると唇を重ねた。

熟れた果実のように赤みを帯びたリーンの唇は、サクルの求めに応じて薄っすらと開く。そこに舌を押し込み思う様、蹂躙する。


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