身代わり王女に花嫁教育、始めます!
(バスィールの狸め。そっちがその気なら……)


“狂王”に可愛い娘をやるのが惜しくなったと見える。大公に対する報復はゆっくり考えるとして、まずはこの生贄の処遇だ。


「撤収は取りやめだ。しばらくこの地に滞在する。兵士たちにもそう命じよ」

「はっ!」


見張りの兵士は膝を折り、狭い台の上で頭を垂れた。


「もう一度言う、私は王の側近“カリム”である。過度な礼は取らぬように。野営地の全員に徹底させてくれ」

「承知しました!」


兵士は梯子を伝い下りていく。

カリムは再び目を凝らし、テントに足を踏み入れつつある花嫁を見つめた。

唯一、見定めることのできるまなざしはどこか懐かしさを覚える。もし、あのときの少女であったら?


(構うものか! むしろ、どんな娘に育ったか楽しみというもの。“狂王”を騙そうとした報い、存分に受けてもらおう)


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