身代わり王女に花嫁教育、始めます!
それは想像であったが、サクルは真実を言い当てたようだ。

カッハールからそのような話を聞いていたのか、リーンは驚きの表情を見せた。


あの愚か者は花嫁を奪い犯して狂王の顔に泥を塗り、さらにはアミーンともども亡き者にしようと考えたのだ。

あの程度で砂漠の覇者を名乗ろうとは……。

およそ悪魔に唆されたのだろうが、同情には値しない。死んで当然の男だ。


(第一、レイラー王女など砂漠に放り出しても構わん。悪魔をたぶらかしてでも生き延びる娘だ)


想像するのも不快に感じ、サクルは頬を歪める。


「ああ……よかった。いくら恋に落ちた男性と一緒とはいえ、レイラーさまはまだ十六歳なのです」


そんなサクルの様子に気づかないのか、リーンは口もとを押さえて涙ぐむ。

本気で王女の身を案じていた様子に、サクルは呆気に取られた。

これなら、いいように利用されても仕方がないだろう。気高い心を持ち、純粋無垢といえば聞こえはよいが……。


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