身代わり王女に花嫁教育、始めます!
(この娘は……誰かが守ってやらねば、この先無事では済まぬだろう。いや、私の庇護に入るのだから問題はないが)


サクルの思惑をよそにリーンはハッとしたように口を開いた。


「でも、それならわたしはどうなるのでしょう? 王女さまが戻られたら、王女さまがサクルさまの花嫁に」

「馬鹿を申すなっ! よいか、私は最初からレイラー王女を追い返すつもりで、国境沿いのテントまで赴いた。側近の名を使ったのはそのためだ。だが、姿を見せたのはレイラー王女ではなく、お前だった」


四年前に王女とその侍女の姿を垣間見たこと。そして、自分が興味を引かれたのはレイラー王女ではなく、彼女のそばにいた侍女のほうであること。

その話をするなり、リーンは瞳をきらきらと輝かせた。


「でも、わたしより王女さまのほうが、美しい青い瞳をしておられて」

「寒々とした青い瞳に魅力は感じぬ。温かな淡い茶色の瞳をした娘なら、手に入れてもよいと思えた」


サクルはリーンの小さな手を握り、その指先に口づける。


「詳細は宮殿に戻ってから説明するが、お前はシーリーン王女として私の花嫁になる。式は明日の午後から行う予定だが」


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