身代わり王女に花嫁教育、始めます!
彼女の濡れた髪や身体に触れ、サクルはわずかに目を細めた。


「床入りの儀式は早めるかもしれぬな」

「そ、それは、その」

「悪魔に触れられたのだ。早く清めねば、魔に侵される」


サクルの言葉にリーンは一瞬で真っ青になった。


実は嘘である。そんなことがあるのなら、この場にオアシスを作り、リーンの身体を清めさせただろう。

だが、こう言っておけばサクルが彼女の身体を性急に求める理由になる。


我ながら姑息だと思いつつ、青ざめるリーンを宥めるため付け足した。


「心配はいらぬ。宮殿の水に身体を浸し、私と交われば何もかも消え去るだろう」

「……本当に……わたしはサクルさまの花嫁になれるのですか?」

「そうだ。たとえ地獄の魔王だろうが、邪魔立てする者は容赦せん!」


リーンは涙で頬を濡らしながら、


「よかった。サクルさまが国王さまで本当によかった。わたし……サクルさまと一緒にいられるなら、どんなことにも耐えてみせます」


< 212 / 246 >

この作品をシェア

pagetop