身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「そうですか……すでにドゥルジもお倒しになったのですね。なるほどなるほど……」

「何か文句でもあるのか? 花嫁から救うのは当然であろう!」

「もちろんでございます。シーリーン王女様をお守りできず、お恥ずかしい限りでございます」


アリーは平伏しているが、内心はリーンではなく、大公妃の娘であるレイラー王女こそ正妃にふさわしいと思っているのだ。

リーンが欲しければ妃のひとりで充分という考えだろう。

サクルもつい先日までは同じ考えだった。だが、今はどうにもリーンを正妃にしたくて我慢できない。


わずかに風が動いた。

涸れ谷の隅に控えていたシャーヒーンが飛び立ったせいだ。


「迎えが来たらしい。カリム・アリー、馬には乗れるな。動けぬならシャーヒーンに銜えて飛んでもらえ」


サクルのとんでもない台詞に、アリーは焦った顔で言い返す。  


「滅相もない! 馬でもラクダでも、自力で乗って宮殿まで戻ります」


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