身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(3)シーリーン王女

(リーン……シーリーン。あなたの名前はお父さまに付けていただいたのよ。お父様とは呼べなくても、きっとあなたを守ってくださるわ)


ずっと昔、リーンがほんの四~五歳のころ、母に聞かされた話を思い出していた。

母が父のことを口にしたのはあの一度だけ。なのに、リーンは随分長い間忘れていた気がする。

どうしてもっと尋ねなかったのだろう。

母の部族の名前も、きちんと聞いておけばよかった。

そうすれば、リーンは天涯孤独でなかったかもしれないのに……。



「リーン……リーン」


身体を揺らされ、リーンはハッとした。


「リーン、目を覚ませ。砂漠の宮殿に到着したぞ」


ボヤけた視界に壮麗な宮殿の姿が映った。

一瞬、まだ夢の世界にいるのだろうか、とリーンが思ったとき、耳元でサクルの声が響く。


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