身代わり王女に花嫁教育、始めます!
躊躇うリーンの耳にサクルの唇が触れた。

舌先で内耳をすくうように舐め、耳たぶを軽く噛む。


「サクルさま……こんな場所で、おやめください……」

「なぜだ? 宮殿は目の前だ。今日中にお前は私の妻となる。口づけなど容易いものだろう」

「でも……人の目がございます。そんな、はしたないこと、わたしは」

「王命だ」


その言葉には逆らえない。


リーンはサクルの胸に手を置き、身体を伸ばすようにして唇を彼の唇に重ねた。

軽く、ほんの少し口を付けたら離れよう。そんなリーンの思惑を見破るかのように、サクルは唇を押し当ててくる。


「……リーン、舌を出せ……」


唇を重ねたまま、かすれる声で言う。


(これも、きっと命令なのだわ……逆らうことなんて)


偽りの王女の身分で許されることではない。


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