身代わり王女に花嫁教育、始めます!
そんな恐れ多いと思う反面、納得のいくことも多かった。

リーンの母が病に伏したとき、大公は本当に母の身を案じていた。親身になって医者を集め、高価な薬もふんだんに使ってくれた。母は助からなかったが、大公は精一杯のことをしてくれたのだ。

なんとお優しい方だろう、とリーンは心から感謝したことを思い出す。

そして理由を知れば、大公妃がリーン母子に冷たかったことも得心がいく。


しかし、それは……。


「サクルさま……母は大公陛下の愛妾だったのでしょうか? ならばわたしは」

「もしそうなら、お前の母が大公妃のもとで侍女の仕事など、するはずがないだろう?」

「それは……でしたら、なぜ?」

「他国の侵攻を受け、大公は妻子の身を案じて離婚を告げたらしい――」


男性側から『汝と離婚する』そう三度繰り返せば離婚は成立する。

それはバスィールもクアルンも同じだ。


もし、バスィールが東の大国に併合された場合、大公一家は国を追われるか最悪殺されるだろう。それを考えて大公は離婚を口にした。

リーンの母と出会ったのはそのあとだという。


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