身代わり王女に花嫁教育、始めます!
――砂漠の精霊が呼んでいる。


そこを目指して、カリムは砂の上を歩いた。

地上に明かりはひとつもないが、星の光でも足元を照らすには充分だ。


砂漠は外周に向かえば向かうほど昼夜の気温差が小さく、過ごしやすくなる。バスィールとの国境近くは夜でも防寒具が不要だった。


乾いた砂の匂いに微かに漂う水の気配。


水使いの巫女の血を受け継ぎ、彼自身も水使いの最高位(ムヒート)に就いている。さもなくば、砂漠は彼を王として認めなかっただろう。


カリムは白いトーブを脱ぎ、上半身裸になった。

腰に吊るした細身の片刃刀シャムシールも、トーブの横に置く。

そして最も低い場所まで移動すると、砂の上に手を翳した。


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