身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「無理ですよ。ホマー様、絶対にばれます」
花嫁は隣に座った王女付きの侍女ホマーにひそひそと話しかける。
クアルンの決まりに従い、ふたりとも黒い全身を覆うマントに身を包み、髪と顔の大部分を黒いスカーフで隠していた。
二十八歳のホマーは夫に先立たれ子供もいない。
今回、人質のような花嫁の付き添いに、自ら名乗りを上げてくれた奇特な女性であった。
でもホマーより奇特な女性がひとり――。
「では、リーン。正直に白状しろと言うのですか? レイラー王女が逃げました、なんて」
ホマーは大きな黒い目をより大きく広げて言った。
二ヶ国の言葉はよく似ている。大きな声で話して聞かれたら甚だまずい。ホマーは押し殺した声で続けた。
花嫁は隣に座った王女付きの侍女ホマーにひそひそと話しかける。
クアルンの決まりに従い、ふたりとも黒い全身を覆うマントに身を包み、髪と顔の大部分を黒いスカーフで隠していた。
二十八歳のホマーは夫に先立たれ子供もいない。
今回、人質のような花嫁の付き添いに、自ら名乗りを上げてくれた奇特な女性であった。
でもホマーより奇特な女性がひとり――。
「では、リーン。正直に白状しろと言うのですか? レイラー王女が逃げました、なんて」
ホマーは大きな黒い目をより大きく広げて言った。
二ヶ国の言葉はよく似ている。大きな声で話して聞かれたら甚だまずい。ホマーは押し殺した声で続けた。