身代わり王女に花嫁教育、始めます!
浴室では男女が親密になりやすいという。

バスィールに入浴の習慣ができた時期、主人の入浴係にあたった女性が身分に関係なく妊娠した。

身分の高い妻はそういった世話などしない。とはいえ、放置しておくと庶子が際限なく増えてしまう。そのため、入浴係は“身ごもることのできない者”と決められた。

どちらにしても王女付きの侍女であるリーンより、はるかに低い身分の者がすべき役目だ。

ましてや王女がそのようなことを……。


「ここはバスィールではない。クアルンでは、夫が望めば妻はすべてのことに応えなければならない」


カリムの言葉は絶対だ。

彼が王の側近であり、王命を口にする以上、リーンに逆らうことなどできない。


「さあ、こちらに来るんだ。私を王と思い、奉仕してもらおうか」


敷き詰められた板の上に、カリムは胡坐を掻いて座った。広い肩にそっと湯桶ですくったお湯をかける。


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