柔らかな、それ。【密フェチ】
ところが彼女は、
「……外して、下さい」
そう言ってきた。
俺が返答に窮していると、彼女は一瞬目線を外して髪を耳にかけた。
不意に現れたそれに、俺の中の衝動が頭をもたげる。
触れたい。
曲線の下の、柔らかそうな彼女の耳朶(じだ)。
理想の形のそれを初めて見た時は、湧き上がる興奮を押さえるのに苦労した。
そして今、俺の中で理性のタガが外れる音がした。
「いいのか?俺が眼鏡を外す時は寝る時と風呂に入る時、それから―――」
片手で眼鏡を外し、もう片方の手の指でその耳朶に触れる。
願った通りの感触に、もう止める事など出来ない確信を得ていた。
「キスする時、だけだ」
彼女の唇に口づけながら、次はその柔らかな耳朶を味わう事を考える。
そして資料室の鍵が閉まる音が響いた。