Loose-leaf*放課後の甘いキス




「―そろそろ始めます」



ざわついていた教室内も、静かになり

やっと声が通るようになった



「あっ、あとでね!」

小さく手を振りながら、自分の席に座った。



「今から、文化祭での各係りを決めたいと思います」



各…係り?

実行委員経験が今まで一度もない私は

全然、知らないことばかり



「具体的な係り名や仕事内容などは、今から配るプリントを見てください」



そういいながら、プリントを列ごとに配り始めた

前から渡されたプリントを見ると、思っていたよりたくさんの係りがあった。

照明…司会、舞台裏……?

なるべく、地味な作業がいいな

一通り目を通し、顔をあげると

横からつんつんっと肩をつつかれた。



「ねぇ」

「えっ!」

「係り、何にする?」

「えっ……表にでない係りなら、なんでも……」




本番に失敗して、他の人に迷惑をかけるのは嫌だし……



「それなら、これやらない?」


そういって指差したのは、“差し入れ係”



「これね、チアとかやっている人に飲み物とかお菓子とかを配る係りなんだよ」



去年の先輩が言ってたんだけど、すごく楽しいんだって~





また、ふわっと幸せそうな笑顔で笑った。

おひめさま

そんな言葉が瞳ちゃんにはよく似合う

差し入れ…かぁ

司会とか、案内係とかより…

ずっと人の前にでるなんてこと、少ないよね……?




私は「いいよ」と答えて、“差し入れ係”の文字に、黄色いマーカーで線を引いた。









< 44 / 86 >

この作品をシェア

pagetop