なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−


空を仰ぐと、下界より遥かに濃い青が広がっている。
大地を二分する大山脈の頂。ここは、人の手の痕がない場所だ。
振り返れば、山の形とは明らかに異を成す奇岩が連なっている。


はるか千年以上の昔、地上には人があふれ、開発の手は高地に地下に海底に、あらゆる所に及んだ。
標高4000mを越えるこの山地も例外ではない。

天に近い大気の希薄な岩場に腰を下ろし、旅人はかつての繁栄を眺めていた。


50階を越える摩天楼が連なり、人類最後の楽園の一つとして栄えたこの天空都市。
だが、滅びたのだ。およそ1000年前に。今は熱で溶けて丸くへしまがったビル群が奇岩の如くそびえるだけ。

旅人は、自分が通り抜けてきたそれらを見ながら拳を握った。

−旅の目的は、ただひとつ。

彼は、あるものを探していた。
それは、この山脈の向こう側にあるという。
彼は立ち上がって振り返った。
−豊かな森と草原が覆うなだらかな山裾。その先には、今は枯れ草色の畑が広がる丘陵地帯。

とうとうやって来た。
滅びの爪痕深い旧世界を越え、山脈の向こうの、滅びを知らない実りの地へ。

しかし、彼の黒い瞳に映るのは憂いと絶望。
旅は、まだ終わらない。

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