なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
◇
レネが駆け出した黄昏れ時から遅れること数刻。
青き山脈の彼方西方に栄える国・ジラルダは、黄金の陽の中にあった。
世界の心臓、王都アメスを抱いて流れるライネ大河の中洲に、鳥が翼を広げるように、王城"紫の宮殿"が建っている。
外壁から内装に至るまで全て紫水晶を積み上げて作られた城。全体が半透明の紫色で、朝日が照らせば深奥にある玉座の間までが透けて見えると言うが、今は夕刻。
金色の陽に照らされて暗い色に沈み、眠るように静まっている。
「−やられたな」
その、一番高い窓辺にたたずむ男がいた。
「ほとんど1年ぶりに奴の影をとらえたまたと無い好機ぞ。次はいつ会えることやら。」
外の夕日が強すぎて、窓ガラスにもたれている彼の顔は影になって見えない。
男は、この国の王子であった。
「我らの"名無しの"弟は出来る子ですよ。兄上」
答えたのは、部屋のど真ん中に陣取った机に座った若い男。
彼もまた夕日に背を向けていて、その表情は知れない。
レネが駆け出した黄昏れ時から遅れること数刻。
青き山脈の彼方西方に栄える国・ジラルダは、黄金の陽の中にあった。
世界の心臓、王都アメスを抱いて流れるライネ大河の中洲に、鳥が翼を広げるように、王城"紫の宮殿"が建っている。
外壁から内装に至るまで全て紫水晶を積み上げて作られた城。全体が半透明の紫色で、朝日が照らせば深奥にある玉座の間までが透けて見えると言うが、今は夕刻。
金色の陽に照らされて暗い色に沈み、眠るように静まっている。
「−やられたな」
その、一番高い窓辺にたたずむ男がいた。
「ほとんど1年ぶりに奴の影をとらえたまたと無い好機ぞ。次はいつ会えることやら。」
外の夕日が強すぎて、窓ガラスにもたれている彼の顔は影になって見えない。
男は、この国の王子であった。
「我らの"名無しの"弟は出来る子ですよ。兄上」
答えたのは、部屋のど真ん中に陣取った机に座った若い男。
彼もまた夕日に背を向けていて、その表情は知れない。