なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
−錆びて冷たい風。険しい山は裸で、谷間は枯れ木もない砂地。
人の分け入らぬ岩だらけの山脈を、小さな人影が登っていく。
旅人は世界を知っていた。
例えばこの奇妙に丸い岩山は、熱で溶かされた太古の都市の建物であること。
足元を流れていく錆色の砂は、崩れ去った瓦礫が雨風に削られたものであること。
この世界がかつてヒトの手で一度滅び、今はその焼け跡に再び芽吹いた黄昏の時代にあること。
旅人は、ただひとつを求めてこの山脈を越えようとしていた。