なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−


レネは、少し冷ました薬湯を湯呑みに注いで姉の枕元へ持って行った。

「ユマ、くすり。」
枕で半身起こしたユマは、妹の手から湯呑みを受け取った。

「ごめんね、レネ」

具合が悪くなると、ユマは何度もごめんねと言う。レネは、それがたまらなく嫌だ。

−レネは、ユマが病気になったときにちょっと世話をするだけだ。いつもはずっと、ユマが何でもしてくれる。

レネが物心ついた頃には、両親はもういなかった。育ててくれたのはユマだ。
いつだって世話を焼いてくれて、何でも教えてくれて、レネのために働いてくれた。

それなのに、ほんの少しレネがユマの看病をしただけで、ユマはごめんねと言う。

…レネが小さい頃、村へ炭や卵を売りに出掛けるときも言っていた。
レネの為に働きに行くのに、ごめんねと言う。

置いていって、ごめんね。
ひとりにして、ごめんね。


そっぽを向いてしまったレネの背を、ユマの優しい声がなでた。

「…レネ、ごめんね。」

二回目のごめんねを聞くなり、レネはベッドへ駆け寄った。

「嫌だ!ごめんなんて言わないで、ユマ、もう出かけないで!」

布団の上から、レネは小さい頃のようにユマのひざにしがみついた。

「レネ…」
「レネを、ひとりにしないで…」

ユマは、レネの涙を感じながら、まだ幼い妹の肩をなでた。

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