百鬼夜行と暴走族 壱
side十夜



十六夜様、早く帰って来てくださいよ


十六夜様と初めて出逢ったときのことは今も覚えてる


敵と戦って深傷を負わされ、動けないとき顔をあげると十六夜様が立っていた


そのときは強さばかりを求めていた俺は自分が動けず、苦しんでいる姿を見られるのが恥ずかしかった


早くどっか行けと声を荒げたのに、すっと座り、黙って手当てをしてくれた



嬉しかった



強さばかりを求めていたのは、孤独だったから自分の居場所をつくるため


親に捨てられた俺は周りに同情された



中には、


「私がいるよ」


「私は同情しない」


「辛かったね」


なんて軽々しく言ってきた女もいたもんだ。そりゃ、同情されたくないやつがほとんどだから気を遣って言ってくれたやつも居たかもしれない、でも下心見え見えで言われても何も響かない



軽々しく口を開く。嫌気がさした



手当てをしてる奴をみて、この女なら気持ちを分かってくれるかもしれないと不思議と思った




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