恋愛、友情。ときどき涙。


……私は静かに教室のドアを開けて入った。

音ちゃんはイスに座っていて……その大きな瞳は潤んでいた。


「綾……乃?」


小さな声で……でもしっかりと私の名前を呼んでくれた音ちゃん。

なぜか私まで……涙が出てきた。


「音ちゃんっ……」


音ちゃんは立ち上がると、走って私に抱きついた。

小動物みたいな音ちゃんの目は涙でいっぱいだった……。


「ごめんっ……ごめんね、綾乃っ……」

「音ちゃん……?」

「私……自分のことばっかりで……綾乃の話、何にも聞いてあげられなかった……。
ごめんね……」


音ちゃん……。

謝るのは……私の方だよ。


「私も……ごめんね。
音ちゃんにいっぱい隠し事して……音ちゃんに話さなきゃいけないこと……たくさんあるの……」

「話さなきゃいけないこと……?」


音ちゃんは大きな目を涙で濡らしたまま首を傾げた。


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