恋愛、友情。ときどき涙。


「多分部室の方だな。
俺、渡しておこうか?」

「え……いいんですか?」

「あぁ。
ちょうど俺も今から部室に行くし」


じゃあ……お願いしようかな。

私が先輩にケータイを渡そうとした……ちょうどそのとき。


「あれ?綾乃?」

「音ちゃん!」


いつの間にか音ちゃんが私達の前にいた。

不思議そうに私を見る音ちゃん。


「どうしたの?」

「音羽、ケータイ忘れてっただろ」

「ケータイ……?
………あっ!!」

「はい。
机の上に置いてあったよ」

「ありがとう~!
全然気づかなかった~……」


音ちゃんはケータイをジャージのポケットにしまうと、先輩に話しかけた。


「湊先輩、ちょっと監督のところに行ってきますね」

「あぁ、よろしく」


湊先輩っていうのか……。

小走りで体育館を出ていく音ちゃんを優しく微笑みながら見る先輩……。


……あれ、何か痛い。

何でか分からないけど……胸がチクッとする……。



< 35 / 220 >

この作品をシェア

pagetop