恋愛、友情。ときどき涙。


「でも……どうして音ちゃんには内緒なんですか……?」

「……カッコ悪いじゃん。
いい年して消毒がダメって……」


……先輩には音ちゃんしか見えてない。

でも……嬉しかった。

音ちゃんは知らないことを……私は知れて。


……ん?

……嬉しい?

何で……?


「こんなんだから海斗に負けるんだよなぁ……」


チクリ……。

胸が痛む……。

失笑する先輩の心の中にいるのは……音ちゃん。


「……沢木?
どうした?」

「い、いえ……何でも……」


私は水で洗った先輩の傷口に消毒液を吹き掛けた。


「っ………」


顔を歪める結城先輩。

これは今……私しか知らない顔。


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