†蝶鬼鈴†
僕の声を遮った彼女は、涙を流していた。
急に彼女は体を起こし、町中に走り出してしまった。
「ま、待って!」
静乃ちゃんの後を追う。
男と女だ、先に走り初めたとはいえ。
静乃ちゃんとの距離は縮まってきた。
彼女は急に曲がり、ちょっとした後に僕も曲がった。
「って………。静乃ちゃん?」
後少しで、掴めそうだった彼女の姿は。
まるで、消えたかのように姿がなかった。
でも、そんなはずはない。
少し後とは言え、曲がったとしても。この道すぐに曲がり角はない。