折り鶴にのせて
「ほら」
 出来上がったのは鶴が手を繋いでいるように引っ付いている2連の折り鶴。
「これが羽のとこが引っ付いている鶴」
 菊地君はそう言って、私の手にそっとその鶴を乗せてくれた。
 仲良さそうに並ぶ2羽の鶴を見ると、深い意味は無いのだろうけどなんだか嬉しく照れてしまう。
「…4羽くっついてるって言ってなかったっけ?」
 照れくさいのを隠すように憎まれ口をたたいてしまう。
「紙の大きさ的に2羽までしか出来なかったんだよ」
 菊地君は軽く拗ねてそのまま自分の席に戻っていった。
 この鶴は貰って良いのかな?
私は手の中にちょこんと収まる鶴をじっと見る。
返したところで、そのままゴミ箱へ放り投げられそうだし、ぐちゃぐちゃに潰れてしまわないようにそっと羽を畳んで大事に机の中に仕舞った。

 古典の授業が始まった。
いつもは真面目に聞いているのに、今日はさっぱり頭に入ってこない。黒板に書かれた事はきちんと書くけれど、あとはプリントから切り出した切れ端で小さな小さな折り鶴を折っていた。
 授業が終わると、授業中に折っていた小さな折り鶴を持って菊地君の机に向かう。
「菊地君、良いものあげる」
 古典の教科書やらを片付けていた手を止め顔を上げた。
「ゴミとかじゃねぇの?」
 片方の眉だけ上げて怪しむようにこっちを見る。
「今日は違うから」
 私はそう言うと軽く握っていた手を広げる。
「すげぇ!ちっさくてもちゃんと気持ち悪い」
 わーさすがだなぁ、なんて言いながら目をキラキラさせて、私の手の上の小さな鶴をつまむ。
その様子と微かに触れた手にドキッとしてしまう。
こんな事で顔が熱くなるなんて。
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