あやなき恋
Ⅰ
葉がいくらか赤らみ、台風のシーズンは終わった。
部屋の前の花壇はつい先週直したところで、今日は毛布を押し入れから出して干そうと思っていた。
天気は晴れ。カラッとしていて少し肌寒いのも気持ちが良い。
「ヒナちゃん、おはよう」
大家の桐生さんがいつものサンダルを履いてゴミを捨てに行った。
「おはようございます」
日向からとってヒナ
私のもうひとつの名前だった。
この町で私の本名を知っているのはお店のママしか知らない。
先輩の菜々子さんだって、本名が菜々子なのかどうかも知らない。
───そう、私はホステス。