あやなき恋



♪♪♪♪~



テーブルに置いてあったケータイが鳴りだす



私はボタンを押してそれを耳に当てた。



「もしもし、おはようございます」


「ヒナ、おはよう」



電話はママからだった。



「今日なんだけど、あなたに今日丸1日予約が入ってね」



「はい、どちら様でしょう」



「ふふふっ、南さんから」



私は飲みかけのコーヒーをこぼすところだった。



むせる私をママはとても楽しんでるようにみえた。



「えっ、なんですって」



驚きすぎてケータイも落とすところだった。



「いたく気に入ったんでしょうね。個室で、オープンからラストまで全部持っていったわ」



オープンは7時から。



ママのお店には一つだけ完全予約の個室がある。



確かに、そこなら昨日みたいに他の指名は入らないけど…



昨日はさようならも言えなかったから、その予約に私はうれしくなった。



「ありがとうございます」



「ヒナが嫌がるんじゃないかって南さん心配してたわよ」



ママが朝からこんなにおしゃべりなのは珍しかった。



「いえ、そんな…」



私は緩む口元を抑えることができずに電話を続けた。



「はい、分かりました。では」



4時30分にお店に行き、支度することを告げ電話を切った。



一番の新入りは掃除やら雑用が多い。



それにママがこんなに手配までしてくれたのだから、私はいつも早めから支度をする。



ケータイを胸にかるくため息をついて。



いつものニュースのアナウンサーの声が虚しく部屋に響いた。



私の部屋にいるんじゃないみたい



私は空いた皿とコップを下げながた。



珍しく鼻歌付き。



鏡を見て、髪をとかすのも楽しい。



昨日と一緒の今日じゃない。



自分が少しずつ変わっていくのが、この時はまだ嬉しかったんだ。



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