あやなき恋
南さんとなら。
いつもなら私はママが用意した別の弱いお酒を飲むけど、
今日は一緒に飲みたい。
それに、この個室で目の前でお酒を注ぐんだから、きっとばれてしまう。
「乾杯」
喉を流れる苦味が今日はとてもおいしかった。
「ぷはーっ!なんや、ヒナちゃんも飲みええなぁ」
南さんが豪快に笑って、料理へと手をつけはじめる。
「ママから聞いたですけど、南さんて社長さんだったんですね。テレビにもたまに出るって聞いて」
「そんなえらいもんちゃうで。俺の力やない」
「そんなの謙遜です。今度テレビ出るなら教えてくださいね。必ず見ますから」
「おおきにヒナちゃん。そう言われると仕事も頑張れる。ヒナちゃんも、そうやろ?応援されたらそれがどんな形でも頑張りたくなるやんか」
「そうですね」
南さんの真剣に話す姿に私はドキッとした。
歯を見せて子供みたいに笑う南さんも素敵だけど
こんな表情もあるんだ。
「……ちゅうことや。ってヒナちゃん聞いとるか」
「あっ、すみません」
私は急いでかぶりを振った。お客様の話を聞かないなんて、なんて失礼なこと…
「…その、真剣にお話されてる姿が格好よくてつい見惚れちゃって…あの、本当にごめんなさい」
私が頭を下げると、南さんは目を一瞬見開いて大声で笑いはじめた。