あやなき恋
「えっ……」
「人にはいろんな都合があるさかい。だから人のことを自分の感情だけで言うのはおかしいねん」
パッと顔を上げると、大きくスッと切れた涼しい目が私をとらえていた。
「俺は気に入った子をとられるようなこと、わざわざ言いたないんよ」
南さんは小さく笑って、ポリポリと頬をかいた。
「あ…ありがとうございます」
南さん…
私は鼻の奥がつまるような感覚になったけど、自然と笑顔になった。
「そうや。さ、ヒナちゃんももっと飲み。なんや、酔っぱらってきたわ」
後ろに手をつき、ふぅと大きく息を吐く南さん。
「大丈夫ですか」
「今日は酔ってんのも気持ちええよ。ヒナちゃんがおるからな」
「体には気をつけてくださいよ」
私は南さんには分からぬようチェイサーを入れるように陸さんに伝えた。
「オレな…2週間後には大阪に戻るんよ」
少しの沈黙を破ったのは南さんだった。
「お仕事でこちらにいらしているんですよね」
「せやけど、な」
淋しそうな目でこちらを見る。
私の頭を撫でながら南さんは擦れた声でささやいた。
「ヒナちゃん…オレのこと癒してや」
私はなんて答えていいか分からなかった。
「膝貸してや」
黙っている私を、また淋しそうな目で見ながら
南さんは正座する私の膝に頭を置いて横になった。