あやなき恋
お会計を済ませたあと、私はお店の外に南さんといた。
秋とはいえ、夜は涼しい。
「南さん、大丈夫ですか?駅まで送りますよ」
一人で立つこともままならない様子の南さん。
「…ホンマ?なら頼んだでぇ…っと…ちょっとやりすぎたけ」
身長の高い南さんの肩を支えるのは結構きつかったけど、
私は南さんの手を握り、背中を抱えて駅に向かうことにした。
「家は…あぁ、出張でいらしてるんでしたね。どこに泊まっていらっしゃいますか」
「ここや…」
信号で立ち止まり、南さんはポケットからホテルの鍵のような物を私に渡した。
「北大路の…ビジネスホテルですか。すぐこの辺で…」
南さんに確認しようと振り替えると南さんはがっくりと頭が下がっていた。
「ちょっ……起きてください!さすがに寝られたら運べませんよ」
「……結衣……やめよ…や」
信号が変わり、北大路ホテルに向かおうと歩きだした時だった。
「えっ…」
とても苦しそうな声。
結衣さん…一体誰なんだろう。
私はどうすればいいのか分からなかった。
とにかく南さんをホテルに送らないと。
私は歩くのを止めて、懐からケータイを取り出した。
南さんから受け取った鍵に書いてある番号に電話をかけフロントの方に迎えに来てもらおうとした。
「あの、今日そちらに宿泊なさる南様なのですが」
私の肩でスースーと寝息を立てる南さんの顔を覗き込んだ。
せめてホテルに帰さないと、こんなところで……
私は夜の行き交う車をじっと眺めていた。