あやなき恋
目を開けると切なそうな南さんの顔が再び目に入った。
頭に黄色の信号が走る。
これ以上深入りするのはダメだ、と。
私は思い切って、南さんをグッと押し避けてベッドから降りた。
後ろを向いたまま、私は乱れた髪をなでつける。
「…あの、今日はゆっくり休んでくださッ…」
背後に気配を感じたときにはもう遅かった。
南さんは私の肩に腕を回して、私は背中から抱き締められたのだった。
「……結衣、なして逃げんのや」
南さんの手がだんだん降りてきて、着物の中に入り込もうとしている。
「…や、ちょっ」
突然の恐怖と南さんが私にもたれかかっているせいで、私は動くことができない。
「…これから夫婦やんか…なぁ」
低く擦れた声と熱い息を耳元で感じる。
私はギュッと目を瞑って、これからどうするべきかを考えた。
南さんが私を誰かと勘違いしてるのは分かってるけど、久しぶりの飲酒に、頭がうまく働かない。
それどころか、体に力が……
南さんの手は着物の胸元を左右に強く引っ張りはじめて
私は咄嗟に身をかがめてしまった。
───倒れる!
腕をついたおかげであまり痛くはなかったけど、
私の肩に頭を預け、そのまま倒れた南さんは頭を強打したみたいで。
ゴンッと鈍い音がした。
「…いって…っあ~もう……」
一瞬空気が固まった。
床に倒れている私と目が合い、南さんも固まってしまっているのだった。