あやなき恋
ホステスの私が言うのはおかしな話だった。
「…なしてそれ知っとるん」
予想外の言葉が返ってきたからか、南さんは目を大きく見開いた。
「それは南さんがおっしゃったからです…奥様のことちゃんと大切にしてください」
「それはちゃうで!」
───パシッ
私は思わず南さんの頬をひっぱたいていた。
「…何が違いますか!クラブに来ることも知り合いのママに会いに来るのも構いませんが」
私は涙目で訴えた。
「こんなこと……奥様と私を間違えるなんて、あんまりです…ひゃっ」
南さんは私の両腕を掴んでドアに押しつけた。
「何するんですか…」
「…ヒナちゃん、ごめんな……」
その言葉と同時に南さんの顔が近づいてきた。
「っ……」
私は咄嗟に顔を背けたけど。
………南さんは、ただ私の肩に顔を沈めただけだった。
「いまさらこんな話、信じてもらおなんて…無理やとは思っとるけ」
南さんの声が、小さく震えてるのが分かった。
押さえ付けられていた腕は解かれ、南さんの腕が背中に回り込む。
「誤解されたまま帰しとおないんよ…ええか」
私は首を横に振ることはできなかった。