あやなき恋
「いただきます」
私は泣きながらあら汁をいただいた。
心に染みるような、そんな味。
私が一口飲んだのを見て、鷹さんも自分の分もよそい、折り畳み式の椅子を出してこちらに座った。
「そんな顔だと、うまいもんもまずくなりますぜィ」
「あ…すみません」
「…辛い時には泣くのが一番でさァ。俺にはこんな励まし方しかできねェ」
鷹さんはそう笑ってあら汁を駆け込んだ。
「ヒナのことをいっつもトミのババアが心配してるんでさァ」
八百屋をくいっと指差す鷹さんは、どこか照れ臭そうだった。
「どこに住んでるんだ、ご飯はどうしてるんだ、ってうるさいんでィ」
「八百屋のおばちゃんが?」
私は目を見開いた。
「あぁ。買いにくるといつもソワソワして、よほどヒナを気に入っているみたいでさァ」
アッハッハと豪快に笑う鷹さんに、私もつい笑顔になった。
「やっと笑ったねィ」
「えっ…」
「さっき見た時は死人のような顔だったぜィ。だから分かんなかったんでさァ」
私はつい下を向いてしまった。そんな風に思われるなんて。
「誰にだって落ち込む時はあるもんでさァ…無理することはないよィ」
鷹さんはニッと笑って私におかわりを注いでくれた。
「本当にありがとうございます」
私はまた涙が出そうになった。
さっきのとはまたべつの涙が。
私はおかわりを受け取ってそれを冷ましながらのんでいると
「そうか~」
と鷹さんがニヤニヤと笑っていた。