あやなき恋
それから私はいつもなら作らないような昼食を作っていた。
グラタンにミネストローネ。近所のパン屋のロールパン付き。
私は菜々子さんが来る前に、彼女の家を訪れることにした。
―ピンポーン―
インターホンを鳴らして、返事を待った。
少しして、まだ寝巻き姿の菜々子さんがドアを細く開けた。
「どちら様でしょ」
「ヒナです!あの…、昨日はありがとうございました」
「ああ、ヒナか。こっちに来るなんて珍しいね」
「いえ…」
私に入るように手招きする菜々子さん。少し照れくさいのかいつもより顔を背けているのが分かった。
「それで…今日のお昼なんですけど、食べにきてくれませんか」
「もちろん。行くからちょっと待ってて」
「はい」
私は玄関で菜々子さんが飼っている猫のクロちゃんを撫でた。
「元気?」
「ナァ」
喉を撫でてやると気持ちよさそうにゴロゴロ言うクロちゃんと戯れていると、部屋着に着替えた菜々子さんが現れた。
「ほら、ご飯だよクロ。私も餌付けされてくるから」
「ちょっと、どんな言い方ですか」
「昨日の片付けのことなら気にしなくていいよ」
菜々子さんは玄関の鍵を閉めながら言った。
「お昼は喜んでもらうけど、昨日のお客さんとの話聞かせてくれたらなんでもいいから」
悪魔のような笑みが私を見上げていた。
「そうきましたか」
「どういう意味」
階段を降りながら菜々子さんはウーンと伸びをした。