あやなき恋
「朝もお世話になりました」
「あぁ、気にしないでくだせェ。今朝はあまり元気じゃなさそうだったが…もう大丈夫そうだねィ」
「鷹さんに励ましてもらったからじゃないですか」
「ハハハッ、ホステスも仕事は大変なんだねィ」
頼んだ飲み物がテーブルに運ばれて、私と鷹さんは乾杯した。
「私服もステキですね。いつもの前掛け姿も私は好きですけど」
「あれかィ。あの前掛けは親父から店と一緒に継いだもんでねィ」
「お父さまはどちらに」
「親父は体が昔っから弱いんでさァ。早めにオレが継いで、親父は今は入院してるんでァ」
「そうなんですか…あ、そうだ。今度お見舞いに行ってもいいですか」
鷹さんは驚いたのか私の顔をじっと見た。
「お父さまはここに来たことがあるんでしょう?ママと一緒にお見舞いに行こうと思うんです」
「それは名案だねィ!親父は朝比奈病院で入院してるんでさァ」
鷹さんは部屋番号など詳しく教えてくれた。
「えぇ、分かりました。喜んでくださると嬉しいです」
鷹さんは嬉しそうにビールをぐいっと勢い良く飲んだ。
「もっと早くからここに来ていればなァ」
「気に入っていただけましたか」
古めかしい雰囲気のオレンジのテーブルや、ハゲかけたソファー。
「ここは和式なのかィ?着物ばかりでさァ」
「あ、いえ。これは私が好きで着てますから」
私は華やかなドレスより着物のほうが品が良さそうで好きだった。
「そうかィ、オレは似合うと思うけどなァ、ああいうドレスも」
そう言って指差したのは水色の長いドレスを着た菜々子さんだった。