あやなき恋
月曜、今日はお店が休みの日。
私は少ない私服を選んで、駅でママと待ち合わせをしている。
今日は鷹さんのお父様のお見舞いに朝比奈病院に行く予定だ。
その後は買い出しと、ママが誘ってくれた新しい喫茶店に行くつもりだ。
朝比奈病院はこの辺りで一番大きい病院で、私も一度お世話になったことがある。
あれはたしか、私が高熱を出して倒れた日だっけ。
そんなことを思い出しながら時計に目をやった。
ママはもうすぐ来るだろう。
駅の隣のバスターミナルは今日も混雑している。
「ヒナ、遅くなったかしら」
「いえ!大丈夫です」
ママが小走りでこちらに向かってきたので、私からも駆け寄った。
「そう。せっかくお見舞いに行くんだから、何か持っていきましょうよ」
ママの提案に私は大きくうなずいた。
「鷹さんのお父様のお名前はなんですか」
「茂樹さん。ヒナは鷹ちゃんとどこで知り合ったの」
「鷹さんのお店です。ほら、八百屋さんの向かいの。私よくそこに買い物に行くんです」
私とママはデパートに入り、よさそうな贈り物を選んでいた。
「そうだったの」
「南さんを送った帰りに、ちょうど仕入れで作業していた鷹さんに会ったんです。衣装のままだったから、驚かれたんだと思います」
「あぁ、南さんを…。あれっきり、何にも連絡がないけど、ヒナ何か心当たりない?」
あ……
"お店にまた来てくれるなら許します"
私があんなこと言ったからだ。
それだけじゃない。
きっと、気を遣ってくれているんだ。
イヤな思いをさせた人に、張本人がわざわざ遊びに会いに来るなんてありえないよ。
「多分、私の接客のせいですね。がっかりされたんだと思います…ごめんなさい」
いろんなショーウィンドウに囲まれて、私はママをじっと見た。