あやなき恋
しばらく掃除をして、トイレットペーパーを補充し終えたところで、ママに呼ばれた。
「はい」
控え室のドアを開けてみると、テーブルにはママと一人の男性が座っていて、じっとこちらを見ていた。
「あっ……こんにちは」
この人がママの知り合いなんだろうと思った。
「この方は南康介さん。久しぶりに大阪から来てもらって」
ほら、挨拶して。とママが言った。
「ヒナです。はじめまして、南さん」
「よろしゅうなヒナちゃん。ここ座り…あっママ、これは指名やないで!堪忍したってなぁ」
自分の隣の席をポンポンと叩き、独特なイントネーションで話す南さんは男らしくて素敵だった。
「失礼します」
私が隣に座ると南さんはニッと歯を見せて笑った。
焼けた肌に白い歯が際立っていて。
グレーのスーツを程よく着くずした南さんに胸が熱くなった。