あやなき恋



お店の雰囲気がガラッと変わった。



「新人さんなんやろ。またママは可愛ええ子ばっか連れてきよって」



「こんな大きい人にまじまじ見られたらヒナがかわいそうでしょ」


ママは南さんに飲み物を注ぎながら苦笑した。



「素直な子なんですよ…若いのにしっかりしてるし。最近じゃあヒナ目当てのお客さんも増えてるんですよ」



ママは自慢気に言って、私にウィンクした。



「せやなぁ。オレなん惚れてまいそうや」



「そんなこと」



「ま、ヒナちゃんなんこないなオッサンより若い方がええやろ」



「南さん、今いくつでしたっけ」



ママが私にお茶を差し出して南さんに質問した。



「もうすぐ30や。はよ落ち着かんとなぁ…はは」


「あらあら、もうそんなになりますか」



クスクス笑うママと南さん。



「ヒナちゃんはいくつなん」



「21です」



「若いなぁ~!うらやましいこっちゃ」



「南さんみたいな大人の男性って憧れます」



「ははは!よいしょも上手いやなぁ、ヒナちゃんは。ほんなら、店開けてぇやママ。ヒナちゃん指名したるよ」



「はい分かりましたよ。ヒナ、着替えてらっしゃい」



「ありがとうございます。じゃあ、一旦戻って、ちゃんと支度してきますので」



私は椅子を引き、そこから降りて南さんに小さくお辞儀をした。



< 8 / 55 >

この作品をシェア

pagetop