あやなき恋
「楽しみにしとるで~」



くいっとお酒を飲み干して笑う南さんはまたママと話をし始めた。


なんだか新鮮で久しぶりにわくわくしている私。



そんな私に私自身が驚いている。



今まで、特にここで働き初めてからは



相手に好かれること、懐に入り込むことを上手くやるようにしてきた。



同時にそこに感情を入れないようにすることも。



情というものは厄介だから。



多分、ママは私がこういう風に考えていることは知ってて「ヒナはしっかりしてる」と言ったはず。



「……はっ」


早く着替えて、行かなきゃ。


一瞬脳裏によぎった感情を流した。



なんだろう、この鼓動が早まる感じは…。



私はロッカーから着物を取り出し着付けを始めた。



今では着物も1人で着れるようになった。



髪を結わえ、化粧をし、体に着物をまとう。



「お待たせいたしました」


一匹の猫として。



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