ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
――翌日。

早朝、要とあかねと由希は校舎へと続く桜並木を歩いていた。

もう9月も後半だというのに、蝉がまだミンミンと鳴いていた。

「おはよう」

突然後ろからあいさつをされ、三人は一斉に振り向いた。

「あれ?榎木先輩」

榎木は名前を呼んだ要を見ると、ニコリと微笑んだ。

「おはよう吉原さん」

「あたしの名前をご存知なんですか?」

「ええ。あなたは色々と有名だから」

また二コリと微笑むが、多少嫌味が入っている言い方だった。

「『吉原の情報網に引っかかったら、小さな秘密から大きな秘密を暴き出す』って私達の学年でも有名なのよ」

「そうですか、それは光栄ですね」

そう無表情で言い返す要の顔を見てから、続けた。

「沢松さん、あなたも有名よ。一年で生徒会書記、生徒会長にも期待されてるみたいね。澤田さんもバレー部でレギュラーみたいだし……何かすごいわね」

(完全に嫌味だなぁ、こりゃ。やっぱ性格悪いね、この人)

(嫌味ね!ヤナ感じ!)

要とあかねが「嫌味だな」と個々で感づいたなか、由希だけは全然別の事を考えていた。

(……わたし、挨拶返してないんだけど……大丈夫かなぁ?)

そんな事を考えた時、由希は何かに気づいたように目を細めて榎木を見つめた。

数秒榎木を見つめた後、驚いたように目を丸くして視線を下に落とした。

榎木はそんな由希を不審そうにちらりと見て

「……クラブ、作ったんですってね。まあ、頑張って」

そういいながら要達の横を通っていった。

「嫌味な感じ!ねえ、由希、要?」

「あ?うん……由希、大丈夫?」

「え?……うん」

「そっか。……でもやっぱあの人性格悪かったね」

「だけど、榎木先輩普段は明るくって優しいって評判なのよ。やっぱりアンタの昨日の失礼な態度が気に入らなかったんじゃないの?私まで嫌味言われちゃったじゃないの!」

「そぉかなぁ?だったら心狭~い!だけど、秋葉がいなくて良かったかもね」

「そうね。秋葉が朝練でいなくて正解。いたら今頃先輩と殴り合いよ!」

「……秋葉ちゃん、ああゆう人、嫌いだもんね」

おずおずと切り出す由希の声は消えうりそうに弱々しい。

「そうよ!超嫌いよ!それに短気だしね」

「さすが幼馴染。スミからスミまでお知り合いだこと」

「何でそういう言い方するかなぁ要は!?」

「あかねも十分短気だよねぇ?由希」

「え?……えっと……」

「もう!要なんかほっといて部室行こう由希!」

「待ってよ!怒んないでよ~あかねちゅわ~ん!」

あかねと由希を追いかけながら要は呟いた。

「やっぱ短気じゃん、あかね」








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