ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
元・第二資料室の前にきた由希とあかねは息を呑んだ。

その原因であるクラブの表札に目を釘付けにされて、心の中で二人して叫んだ。

(表札派手すぎでしょ~!?てか、もうこれ表札じゃないわよ~!!!)

(表札の役目果たしてないかも……!!)

その表札の周りは紙の白いバラに囲まれて、大きく赤文字で

【 私達! 】

と書かれていた。

その下に【私達!】より少し小さめに薄めの黄色い文字で

【 怪事件捜査倶楽部! 】

と書かれていた。

背景の色は白、そう薄黄色の文字が目立つはずがない。しかもその表札はどこかおかしいのだ。

普通の部活やクラブの表札は縦・約20cm、横・約10cmが普通だ。なのにこの表札は縦・約1m、横・約50㎝もある。

果たしてこれは表札と言えるのだろうか?

「これ表札じゃないわよ!もう看板じゃない!」

あかねがそう的確に突っ込みを入れると、要は飄々と言ってのけた。

「え?表札よ。ちなみにあたしの手作りよ!」

「そんなん関係ないし!っていうか絶対表札じゃないわ!」

あかねは激しい口調で突っ込みを入れた後、要に顔を近づけた。

「ワザと!?ねえワザとなの!?」

問い詰めるように言うと、自分の髪を掻き毟りながら半分泣き出しそうに叫んだ。

「いやああ!!私いい笑いものじゃないのぉ!「生徒会の沢松さんって【私達!】っていう看板のクラブに入ってるんですって~!」なんて嘲笑われるんだわぁ!!」」

「落ち着いて、あかね。考えようによっては目立つチャンスじゃない!」

「目立つ!?こんなんで目立ってもしょうがないじゃないのよぉ!!」

そう叫ぶあかねの耳に、隣の階段を上る足音が響いた。

しばらくあかねが押し黙るとすぐ横の階段から二人の女子生徒の顔が見えた。

すかさずあかねは顔を作り、さわやかにあいさつをする。

「おはよう。早川さん、峰緒さん」

さっきまでの顔の崩れが嘘のように、美しい笑顔であいさつをされた女子生徒、早川さんと峰緒さんは

「あっ、沢松さん。おはようございます」

「おはようございま~す」

と、気持ちよく挨拶を返し、要達の横を通り過ぎて行った。

その背中を見送ると、あかねは二コリとしていた美しい笑顔を一瞬のうちに緩ませた。

するとそれを見ていた要は呆れたように、感心したように呟いた。

「はあ……アンタのその早業はいつ見てもビックリドッキリするわ、あたし」

「ふん!何とでも言ってちょうだい!とにかくこの看板、いや表札は、もはや表札じゃないとみなし生徒会が撤去を命じます!」

「はあ!?……そうやって権力をかざすのね!何て卑怯な!!」

「うっさい!大体要はセンス悪いのよ!昔から!」

言い返すあかねに、要は言い返されて言葉を聞き流して、耳に手を当て全然かみ合わない返事を返した。











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